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迫幸一|モノトーンの世界 人間たちの幻影

会期:2018.5.15(tue)-20(sun)

時間:11:00-20:00(last day -17:00)

 

知られざる主観主義写真 第2回

 

「人間たちの幻影」

迫幸一(1918〜2010)は広島生まれ、広島育ちの写真家で、原爆投下時には市内で被爆をしています。

戦前、全国でも有数の都市だった広島市はモダニズム芸術や写真趣味も盛んな土地柄でしたが、原爆の被害によって写真界の復興は立ち遅れていました。1952年の『アサヒカメラ年鑑』に「子供の世界」が初入選して以降、広島のアマチュア作家として名を上げつつあった迫は、広島の写真界の復興に尽力します。写真団体を組織し、モダンアート協会広島支部を立ち上げ、北園克衛の『YOU』に参加して「第10回YOU形象展」(1957年)を広島へ招聘するなど、全国的な写真運動に積極的に関わってゆくのです。

迫がカメラ雑誌などを通してオランダやベルギーなど外国のコンテストに盛んに応募するのもこの50年代で、この時代は国際的なコンテストが多く、今考えられているよりもはるかにアマチュア写真家たちが世界の写真表現に意識を向けていた時代でした。そんな中で1954年の第2回サブジェクティブ・フォトグラフィー展(ドイツ、ザールブリュッケン)では、石元泰博や岩宮武二など、プロ・アマ含む9人の日本人写真家たちとともに迫の「風信」が入選しています。その後、雑誌『サンケイカメラ』が企画・招聘した「国際主観主義写真展」(東京、1956)にも「視覚A」などを出品し、第2回展(1958年)、第3回展(1960年)にも出品しています。

サブジェクティブ・フォトグラフィーはオットー・シュタイナートが提唱した写真の運動で、写真を現実の模写として考えるのではなく、あくまでも個人の主観的な眼差しで捉え直そうとするものです。ジャーナリズムや記録的な写真の用途から離れて、象徴的あるいは暗示的な表現を好んだり、部分や動きへ注目したり、ネガフォトやモンタージュ、フォトグラムなど印画のマニピュレーションも多様です。迫は、ハサミと糊を使用したモンタージュ技法に定評がありますが、外界で得たイメージと自らの内なるヴィジョンとを印画紙上で一致させようとする迫にとって、主観主義写真はまさに「待っていた」写真の運動であったと言えるでしょう。またそれは多くの全国のアマチュア作家を含む写真家達にとっても同様でした。

しかし主観主義写真はプロの報道写真家達や、50年代に日本写真界を席巻したリアリズム写真運動を指示した写真批評家たちには酷評され、運動としては沈静化します。主観主義写真が戦前の前衛写真の復興という側面があったことに加えて、同時代美術との境界で発生した運動であったこと、そしてそれに呼応したのが地方アマチュアであったことなどが、写真界本流の動きではないとみなされたためではないでしょうか。主観主義写真運動に参加したアマチュア作家たちの作品群は、多くが埋もれたままであり、評価も定まっていません。

本展は、いまだ全貌が明らかにされたいない主観主義写真の作家・迫幸一の写真をシリーズで紹介する2回目の写真展として、代表作を中心に迫の写真世界をご覧いただきます。初期から後年の作品まで、撮影原板と作家本人による複写ネガを元に制作されたニュープリントによってたどります。(戸田昌子)