今回の初個展では「遠い風景」をテーマに、電車の窓などをモチーフにして平面作品やインスタレーション作品を始め映像作品も展示。
「遠い風景」とは、空間的に離れた場所として、もしくは過ぎ去ったものとしての風景を指す。時間的距離や空間的距離を持つ遠い風景が一瞬の光の残像のように、または長い時の記憶のように白い画面の上に並ぶ。
また、絵画の可能性を追求していく中で、現在行っているのが溶剤による転写技法である。写真という機械的な眼を通すことで表出された図像を転写することにより自身の見る眼からも距離のある風景を作り出している。さらに、時間的感覚への関心から映像作品の制作も新たに行い、それらが複合的に合わさったひとつのインスタレーション作品を展示する。
今日、様々な情報が距離を感じさせる隙もなく行き交う。日本にいながらにして外の国の人とネットを介してつながることもできるし、交通機関の発達により遠く離れた場所がますます近くなっていく。作品の中でその喪失されつつある距離(現在と過去、内と外、近くと遠く)に言及することで、観衆の諸感覚に奥行きを与えることができればと考える。
(青原恒沙子)