映像作家として目覚ましい活躍の五反田和樹の個展を開催いたします。
地元広島では8年ぶりの個展となります。
「すべての見えているものは切り取られ、編集されたものである」という考えのもと制作する実験映像としてのコラージュ作品や映像を、galleryGの空間でこれまでよりスケールの大きな形で展開します。混沌とする世界の中で自分が見るものや受け止めるものを、ゼロポイントの地点からどう見据えるかを観客に問う展示となるでしょう。ぜひご高覧ください。
歳を取るにつれてとりとめがなく漠然とした時流の中にいるような気がする。
知識や体験は積み重なってきているはずだが、以前にも増して自分の無知さに気づき始めている。
開かれた道を見つけたり脇道の茂みに迷い込むように、自身の身体と言葉から出来上がってきた手の届く範囲を治安の良いものにしなければならない。それが身の回りの家族や友人、そして世の中の平和に繋がると考えている。
社会には編集されていないものが一つだけある。
それは「私」が生まれてから死ぬまでの一生、自分が自分であることの感覚である。
それ以外の情報や事実は全て編集されて、暫定的な状態で入ってくる。
状況や時流が変われば正しさや間違いは変わってしまう。
あるのは個々の一貫した人生だけである。私もあなたも何も知らず、原点から見えるものがある。
それを見失わないようにしたい。
しかし、それは「社会の情報が全て編集されているものなので信用には値しない、だから世の中は自分を中心に回っており、自分の言動が全て正解になる」という自己中心的で無批判な正当化を意味するものではない。
むしろ「真偽不明の情報の洪水に翻弄され、自分の言動が全て間違ってしまうかもしれない」という自己認識を通じて、社会の法や倫理を批評性を持って尊重しながら生きるという責任についての話である。
政治的な立場、陰謀論、世代間や経済格差、人種問題など、様々なテーマで意見が対立し、デマや極端な主張が広まる現状は、まさに情報の「編集性」と「信頼性」の問題を反映している。
これらの問題は、個々の「ゼロポイント」からの理解と、社会全体での相互理解の重要性を示している。
この度の展覧会で作品を鑑賞して頂ける皆様には、明確に答えのない漠然とした作品の数々を面白がりながら各々の感覚で楽しんで頂ければ幸いです。
グループ展
2020年「IT AIN’T EASY~LAST EXHIBITION~」@横川創苑(横川/広島)
2019年「接続 UNITES」@Basement GINZA(銀座/東京)
2018年「Summer Group Show 2018」@THE blank GALLERY(原宿/東京)
2016年「Virgin Babylon Art Works Exhibition」@Quiet Noise(池ノ上/東京)
2013年 ポストカードアート展「scopophilia」@4bid gallery(レスター/イギリス)
企画協力:92project