写真集『ハマアツァへ―to Hamaatsa―』の刊行にあわせ、本展ではその制作の背景に流れていた時間と物語を、あらためて空間にひらく。出発点は、2021年の個展「from where I am」。作者自身が立つ場所から土地と向き合い、アメリカ南西部で聞いた物語を、写真と言葉でたどった。その経験は一冊の本となり、さらに本作『ハマアツァへ―to Hamaatsa―』へと続いていく。「from」と「to」のあいだには、語りが受け渡され、物語が次の場所へと向かっていく時間が流れている。
本作で捉えられる土地は、ただのランドスケープではなく、ひとつの存在として向き合ってきたポートレイトである。そこに息づくのは、土地の表情や沈黙、そしてアメリカ先住民のストリーテラーたちによって受け継がれてきた声の気配だ。
土地は背景ではなく、記憶を抱え、物語を語る存在である。写真は「見るための像」ではなく、「語りに立ち会うためのかたち」としてそこに置かれる。
写真集『ハマアツァへ -to Hamaatsa-』 2026年4月20日左右社より刊行
ニューメキシコの高原沙漠、この上なく清浄な大地。ひとりそこを旅する彼女が 見出したのは物語の回帰だった。彼女の写真が、循環する時の窓になる。
ー管啓次郎(詩人) 写真集 『ハマアツァへ -toHamaatsaa-』帯文より
黒住 奏 Kanade Kurozumi
写真家、文筆家
広島生まれ。ニューヨークで映像を学び、メディア業界に携わった後、帰国。
その後、アメリカ先住民文学へと関心を深め、広島大学大学院にてアメリカ文学を研究する。
土地·記憶·物語の関係性をテーマに、写真と言葉のあいだを往復しながら表現を続けている。
現在は広島の大学で教えながら、温泉の湧く里山で家族と暮らす。文学研究と実践が響き合う暮らしの中で、土地が語る声に耳を澄まし、日々の物語を紡いでいる。