exhibition FUTURE MEMORY
時間軸の中を生きる私たちは、過去の記憶と未来が交錯するこの瞬間に立っています。過去を知ることで 現在を理解し、透明な光に包まれた未来を見据えるために、現在から未来への距離を測ります。自分が存在しなかった過去から、自分が存在しない未来まで時間軸を広げたとき、今この瞬間の尊さを感じます。
79 年前の 8 月 6 日、広島。その日に刻まれた悲しみ。多くの命が奪われ、多くの未来が消えたその日から、流れ続ける時間は私たちの存在を形作り、今日ここで誰かと語り合う姿を描き出しました。
平和資料館に収められた被爆遺物との出会いが「Future Memory」を生み出しました。過去の声を聞くために、 アーティストは遺品に近づくことを試みました。限りなく近づいたその瞬間、時間軸が消え、物言わぬ遺品が語る物語に遭遇できたのかもしれません。
今回の展覧会で3歳の時に原爆投下後に亡くなった伸一ちゃんの三輪車が、ジュネーブの国際赤十字・赤 新月博物館でモニュメントとして恒久展示されることを皆様にご報告します。三輪車を広島から皆様と共に温かく見守ることができたらと願っています。
被爆から79年、この場所で出会い語り合う私たちは、確実に79年後の世界を作っていることを心に留めて。
石河真理