MASAO OKABE
Touching A-bombed Tree in Hiroshima
そこから動くことの出来なかった樹木に、動くことのできる美術家が触れた生命の存在。土地の、場所に流れた時間に抱かれ、静かに向き合う時間を創りたいと思った。
2007年6月8日、陽の沈んだヴェネチアのジャルディーニ。第52回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館は、宇品駅遺構から擦りとり採取した1500点のフロッタージュによる「ヒロシマの皮膚」に抱かれた被爆石が列をなして配置され、テンポラリーな歴史の現場となった。漆黒の、闇のような静寂な空間に、鉛筆が石を叩きつけるような擦過音が響く。ストロボが閃光のように、激しく左右に動く右手を射す。盲目の写真家ユジェン・バフチャルは、フロッタージュする音を聞きながら撮影をおこなった。
「ことばに表せない感動をえた。戦争は人を盲目にしたが、ヒロシマ以後あなたが制作することで、いったん盲目になった人に光を与える仕事が可能であることを示してくれた。ここまで来たかいがあった」と、ユジェン・バフチャルさんはそう語り、被爆したイチョウの樹膚を擦りとることを私につよく促した。「声を発しない」生命。それに触れて応えたいと思った。
フロッタージュによる表現を1977年よりはじめる
1979年パリで169点の「都市の皮膚」を制作
1980年代後半より広島の原爆の痕跡を作品化する作業をはじめる
1988年のヌーサ(オーストラリア)における市民とのコレボレーション以来、ワークショップを積極的に実施、国内外の各都市で制作・展覧会活動を展開している
1996 「ヒロシマ・メモワール」(広島市現代美術館)
2000 「光州ビエンナーレ」(光州 韓国)
「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」(新潟)
2001 「ART for the SPIRIT 永遠へのまなざし」(北海道立近代美術館)
2002 「N’OUBLIEZ PAS 忘れない」(日仏会館)
2005 「シンクロニシティ同時生起」(広島市現代美術館)
2007 第52回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館(コミッショナー港千尋)
「STUDIO MONTPARNASSE」(リトグラフ作品集刊行 パリidem/item 2007)
『岡部昌生 わたしたちの過去に、未来はあるのか』(港千尋編 東京大学出版会 )
港千尋とのユニット「記憶を汲みあげる(ローマ日本文化会館)
2011 岡部昌生+港千尋「タスマニアのヒロシマ」MONAコレクション(ホバート タスマニア)
岡部昌生+港千尋「事後のイメージ」(ベイルート・アートセンター)
「きみは3.11を見たか?」(旧日本銀行広島支店)
2012 岡部昌生+港千尋「個園」(人可藝術中心 杭州 中国)
「はま・なか・あいづ文化連携プロジェクト」(福島県立博物館、南相馬市博物館)
2013 岡部昌生×港千尋「色は憶えている」(札幌、東京、広島)
岡部昌生+港千尋「アート・アーチ・ヒロシマ」(広島県立美術館)
「おらほの碑—南相馬の記憶と記録」(南相馬市博物館 福島県立博物館)
2014 「札幌国際芸術祭2014」(北海道立近代美術館)
「そらち炭鉱の記憶アートプロジェクト」(旧住友奔別炭鉱ホッパー遺構)
2015 「キオクとキロク」(福岡市立美術館)
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被爆70年祈念連携プロジェクト
※日時、時間は変更になる場合がございます。
主催:被爆70年祈念連携プロジェクト 岡部昌生「被爆樹に触れて」
お問合せ:CAI02 TEL:011-802-6438(13:00〜)担当/佐野
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